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暮らしのかたち
旅で出会った家とライフスタイル
vol.5 イタリアから見た日本 その2

文・写真=杉田基博+トランローグ・アソシエイツ

昨年2月、25年前にトスカーナで道に迷った私を、一宿二飯で持て成してくれたリビアーノとイソリーナの孫、ルカ(26歳)から届いた一通のメール。 私は、リビアーノから招待を受け、4月に彼らの住むボローニャを訪ねた。

そして昨年末には、建築事務所に勤めるルカと同僚マテオ(28歳)が千葉にある私の家とセカンド・ハウスを訪れた。今日は日本滞在2日目。イタリアにはない日本ならではの建築を見て触れるため、新宿、代々木、表参道へ向かった。



憧れの東京コンテンポラリー建築ウォッチング

初めに新宿駅で下車した。彼らもよく知る丹下健三設計による都庁を見せるためだ。

彼らの暮らすボローニャ新市街で一際目を引く国際コンベンション・センターは丹下による設計だ。さらに、将来建て替えられるボローニャ駅も磯崎新がコンペで受注している。

ランドマークとなる新建築が日本人建築家によって設計される街に暮らしていることが、彼らが東京や日本に対して職業上の憧れを抱くことと関係しているに違いない。

「何て日本はクリーンなんだ!イタリアの道はゴミだらけ。しかし、なぜこんなに人が少ないの?」 西新宿のオフィス街は、すでに正月休み。都庁外観を撮影して駅へ引き返した。

原宿駅へ移動すると、カップルや家族連れ、外国人観光客で混雑していた。彼らにとって、ようやく東京らしい風景を目の当たりにして期待感も高まってきたようだ。

ここでも私たちは、巨匠・丹下健三の国立代々木競技場から訪ね、代々木公園、明治神宮へと移動した。

第19回 暮らしのかたち 旅で出会った家とライフスタイル vol.5イタリアから見た日本 その1
明治神宮で記念撮影する
マテオ(左)とルカ(右)

妹島和世設計によるhhstyle.comのある遊歩道をスタート地点として、表参道にある有名建築家によるコンテンポラリーなブティックやインテリア・ショップを一軒一軒、外観から最上階までくまなく見て周った。

第19回 暮らしのかたち 旅で出会った家とライフスタイル vol.5イタリアから見た日本 その2
妹島和世設計によるhhstyle.com原宿本店。
ビル前面の歩車共存の遊歩道は、
イタリア人もお気に入り!
photograph: Luca Ladinetti

彼らが最も注目していた妹島和世設計によるディオール・ビルに至っては、日本人建築家の卵たちがイタリアの古典建築を目の当たりにしてそうするように、手で触れて素材や収まりを確認し、執拗にディテールを撮影した。ディオール・ビルは毎月のようにイタリア建築雑誌の表紙やグラビアを飾っていたそうだ。

第19回 暮らしのかたち 旅で出会った家とライフスタイル vol.5イタリアから見た日本 その3
妹島和世+西沢立衛/SANNA設計による
ディオール表参道
photograph: Luca Ladinetti

青山通りを越えて表参道の奥、湾曲したグリーンのガラス・ピースだけで構成された外観が特徴的な、プラダでの滞在時間は極めて長かった。付き添った私もいい加減疲れ、いつか店員に追い出されはしないか、と内心落ち着かなかった。

第19回 暮らしのかたち 旅で出会った家とライフスタイル vol.5イタリアから見た日本 その4
スイス人建築家ユニット、
ジャック・ ヘルツォーク&ピエール・ド・ムーロン設計による
プラダ・ブティック青山店
photograph: Luca Ladinetti


日本人は海外へ移住しないの?

表参道で最も賑わうオープン・カフェで休憩した。 ドリンク一杯1500円前後するその店の値段に二人は言葉を失った。

「いま日本経済はどうなの?」

ルカが尋ねた。

「EUやアメリカ同様、かなり悪くなっている。仕事量が減り、仕事当たりの予算も減っているので、景気は以前の半分くらいの印象かな!?」

「日本人も海外に移住しているんでしょ?」

マテオの意外な質問に、私は一瞬戸惑った。

「日本人は移住しないなぁ」

「えっ?日本人は日本を愛しているんだね!」

「そうだね。日本人は日本が好きだね。それに、いま日本から移住したい国が見当たらないんじゃないかな!?」

「いまイタリアでは、若者が仕事を求めてロンドンやアメリカに移住しているんだ」

「そうなの!・・・日本人も100年前には、ブラジルやアメリカに移民したんだよ」

「日本人がブラジルに移民! それは今日最大の驚き、大発見だ! イタリア人はアルゼンチンに移民したんだ」

「その後ブラジルに移民した日本人の孫たちが日本に逆移住したけど、日本での仕事が減って、またブラジルに帰って行く、というのが最近の傾向なんだ」

充分に休憩すると、私たちは夕暮れの表参道を後にして、千葉県上総一ノ宮近くのセカンド・ハウスへと向かった。



セカンド・ハウスの原点はトスカーナにあり

マテオの両親は、ボローニャ郊外の田舎で家庭菜園を楽しんでいる。ルカの家族も25年以上前からトスカーナで野菜を作って田舎暮らしを満喫している。私たちのように休日をセカンド・ハウスで過ごすライフスタイルは、イタリアでは一般的なのだ。

正確に書けば、私たちが房総のセカンド・ハウスで田舎暮らしを始める際、最も影響を受けたのは、25年前のトスカーナでの体験だ。ルカの祖父母と、しかもあの美しいトスカーナで出会わなかったら、今日の私たち家族のライフスタイルは実現していなかった。

第19回 暮らしのかたち 旅で出会った家とライフスタイル vol.5イタリアから見た日本 その5
わが家のセカンドハウス。
サンルームは真冬でも快適空間

夕食を済ませると、私は沖縄土産の三線(さんしん)でハイサイおじさんを弾いて聴かせた。

テンコ・テンコ・テンコ・テンコというイントロや間奏が、彼らにもわかりやすかったのか、直ぐに覚えて気に入ってくれた。

ルカは、ボローニャで最も有名なスカ・ロックを中心とするバンドの最年少メンバーでギター担当。
ルカは、私から三線を取り上げて演奏を試みたが、疲れたせいか思うように行かず、諦めた。

すると、息子が小屋裏から私のギターを持って来てルカに差し出した。わが子の、積極的に他人と係わりを持とうとする姿が嬉しかった。その後も息子は、鶴を折るなど親が教えないことを自ら考えて実行し、客人を楽しませる努力を惜しまなかった。

国や世代を越えた交流を願う気持ちは、リビアーノ、イソリーナ、私たちも同じだ。



大晦日はカウントダウン・パーティーで朝までダンス!

大晦日の今日、彼らは銀座界隈のコンテンポラリー建築や、故黒川紀章の出世作、カプセル型マンションの中銀カプセルタワービルを訪ね、大晦日から元日にかけてクラブのカウントダウン・パーティーで夜通し踊る予定だ。

第19回 暮らしのかたち 旅で出会った家とライフスタイル vol.5イタリアから見た日本 その6
黒川紀章設計による
中銀カプセルタワービル(なかぎんかぷせるたわーびる)。
建替が決定している
photograph: Luca Ladinetti

彼らは朝食を済ませ、車に乗り込み、駅のホームへと駆け込んだ。

「モトヒロ、家族の皆さんで良い新年をお迎えください!」

「お二人も!気をつけて!グッド・ラック!」

第19回 暮らしのかたち 旅で出会った家とライフスタイル vol.5イタリアから見た日本 その7
カウントダウン・パーティーを行う渋谷のクラブ。
ルカとマテオは夜通しダンス、ダンス・・・
photograph: Luca Ladinetti
(つづく)

次回は、二人のお正月体験についてリポートします
杉田基博+トランローグ・アソシエイツ
「住環境ビジネスをデザインする」をテーマに、住宅・インテリア関連企業の商品開発とブランディングを手掛ける。また、ワークショップやメディア活動を通して、住環境に係わるデザイン・カルチャーを広く紹介している。 詳しくは、ホームページhttp://www.tranlogue.jp/ならびにブログhttp://tranlogue.cocolog-nifty.com/blog/

2009.2.18

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